
世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、デジタル化による組織やビジネスモデルの変革=DXの重要度はますます上がっています。
しかし、多くの企業が取り組みはしていても苦戦を強いられています。
そこで今回はDXにおける企業の課題と成功のポイント、DX実現に欠かせない指標(KPI)についてご紹介します。
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目次
DX推進指標とは
DX推進指標とは、DXによって経営改革が行われた際の結果を測定するためのKPIです。
KPIは、組織における目標達成の度合いを示す数値としてマーケティングや経営分野などで幅広く用いられており、耳にしたことがある方も多いでしょう。
このDX推進指標に関連してIPAは、各企業の自己診断結果を収集・分析することを目的に「DX推進指標自己診断結果入力サイト」を公開しています。
IPAの事例詳細
IPAは、DX推進指標に対し、各企業の自己診断結果を収集・分析することを目的に「DX推進指標自己診断結果入力サイト」を公開しています。
DX推進指標の自己診断結果を入力すると、6段階のレベルに判定され、自社の全国・業界内での位置や、DX先行企業との比較できる分析結果が提供されます。
ぜひ、自社のDX推進の成熟度レベルをチェックしてみてください!
DX推進指標が取りまとめられた背景
プロジェクトの進行において、その規模の大小にかかわらずKPIの設定は不可欠であり、これはDX推進の場合も同様です。
また、DX推進の知見が少ない一般企業では、DX推進の成熟度を自社で判断することは難しく、客観的な指標が必要となります。
そこで、DX推進における目標達成に対する度合いを測る指標として、経産省によって「DX推進指標」が取りまとめられるに至ったのです。
DX推進指標を活用する3つのメリット
認識を統一できる
DX推進指標を活用すれば、自社のDX推進度合いを客観的指標に基づいて判断できます。
失敗しやすいDX推進においては、関係者間で生じた小さな認識のズレも致命的なリスクになりえます。
DX推進指標の回答には関連部門が集まることになりますが、その際に足並みを揃えるという意味でも認識の一致は不可欠です。
社内コミュニケーションツールを利用してDXのビジョンを示し、DX推進指標を用いて自社のDX進捗状況を共有しましょう。
競合他社との比較ができる
DX推進指標を使い自己診断を行うと、詳細なベンチマークデータが提供されます。
このデータにおいては他社のDX推進成熟度を踏まえ自社の成熟度を相対的に比較でき、競合他社と比較できます。グローバル競争を目指すためにも、まずは国内市場でDX推進の先駆者を目指し進めましょう。
また、個々のデータ項目において、他社と比較して秀でている項目と追いついていない項目を把握できます。これもDX推進指標を活用するメリットのひとつと言えるでしょう。
ネクストアクションを検討できる
DX推進指標にはレベルが6段階あります。
現在のレベルの把握により、次のレベルに到達するために必要なことがそのままネクストアクションの把握に繋がります。
まだ実践のプロセスに型がないDX推進において、貴重な指針となるでしょう。
DX推進指標の構成について
経済産業省が発表している「DX推進指標」は以下になります。ここでは、DX推進指標の構成内容について説明します。
「DX推進のための経営のあり方、仕組み」の指標
ビジョンの明確化と経営トップ層のコミットメント
DXを進めるには、顧客視点でDXがどんな価値を生み出すのかビジョンを明確にする必要があります。業務効率化のみならず、DXによる価値創出・方向性などをビジョンとしてまとめましょう。
DX推進指標では、IR資料や中期・長期経営計画などが成熟度判定のエビデンスになると設定されています。
また、経営トップのコミットメントも判断材料です。コミットメントとは、変革を根付かせるため、経営としての仕組みを明確にし、持続可能なものとして定着させることです。
そのため、組織の整備や権限移譲、予算配分、人材評価のあり方などが指標となります。事業計画、組織図・体制図がそのエビデンスとして示されています。
新規顧客獲得割合や研究開発スピードなどの経営指標
経営層のコミットメントが、全社的に共有される必要があります。そのため、体制構築および関係者のマインドセット醸成が重要です。
体制は、DX推進を率いる人員、役割の明確化が大切になります。また、他部門がDX推進部門と協力体制にあるかも重要です。場合によっては、社内では足りないスキルを補うため、外部との連携が必要です。
このような体制のもと、DXを推進できるマインドセット、すなわち挑戦や失敗から学ぶ姿勢が関係者間に存在している必要があります。
人材確保や育成も触れられています。DXに加えて事業ニーズを理解する人材、デジタル技術やデータ活用に精通した人材、またこうした人材が融合してDXに取り組む仕組み作りが重要です。
体制構築と関係者のマインドセット醸成
DXの取組状況を示す指標としては、通常の経営指標活用を経産省は求めています。
一方、例として企業全体におけるデジタルサービスの割合、デジタルサービスへの投資額などが挙げられています。
各社でデジタルサービスの定義を設定した上で、定量的な進捗管理を行う必要があります。
「DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築」の指標
DXを支えるITシステムの要件とは
ITシステムの要件として、以下3点が示されています。
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IT資産の仕分けと評価
新たなITシステムを構築の際、既存システムの能力について評価し、不足点を明確にする作業が不可欠とDX推進指標では示されています。
そのため、IT資産管理台帳やシステムリスク管理台帳、システム分析・評価結果などの資料を作成して、既存のIT資産の全体像と課題を理解する作業が必要です。
取組状況の進捗管理
経営と同様に、ITシステムについても取組状況の進捗管理が示されています。例えばDX人材の数や人材育成のための研修予算、サービス改善の頻度などが定量指標となっています。
DX推進指標から自社のDX推進レベルをチェック
定性指標における成熟度レベルの考え方
DX推進指標では、定性指標において6段階で評価されており、最終的なゴール(レベル5)は「デジタル企業として、グローバル競争を勝ち抜くことのできるレベル」とされています。
この成熟度の利用により、自社の現在のレベル、次に目指すレベルの認識、次のレベルに向けて具体的なアクションにつながると期待されます。
定量指標の考え方について
「DX 推進の取組状況」は、DXの実行によって経営にもたらされる変化を反映できるものについて、いくつか事例が用意されています。
基本的には、自社がDX により伸ばそうとしている定量指標を選択して算出し、数年後に達成を目指す数値目標を立て、進捗管理を行っていく活用が想定されています。
また、「IT システム構築の取組状況」は、基本的に企業単位での評価を想定されており、自社で対象とするシステムやデータを特定した上の回答を想定しています。
定量指標の評価方法
成熟度の回答は、なぜその成熟度と判断したかの根拠とそのエビデンスを合わせた回答を望ましいとされています 。こうすることで期待されるメリットは以下のとおりです。
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ただし、根拠とエビデンスについては、負担の問題から任意とされています。
DX化を阻む主な課題と成功のポイント
具体的なビジョンが示されていない
DXは単にシステムを刷新したり、業務をデジタル化すればよいものではありません。
デジタル技術を活用し、どんな価値を創出するのか、会社をどのように変革・発展させたいのか、というビジョンが重要です。
しかし、ビジョンが無いままAIやRPAなどのツールの導入が目的化してしまい、ビジネスモデルの変革につながっていない企業が多いといわれてます。
またDXにはこれまでの仕事の仕方や企業文化の変革も必要になるため、抵抗勢力の反対に合うことも考えられます。
上手く付き合いながらビジョンを達成するには、経営トップのリーダーシップが必要です。
昨今、新型コロナウィルス対策に対し、国民の行動変容を求めるリーダーの発言が注目されています。企業のDX推進においても、経営トップが従業員の心に響く夢のあるビジョンとそれに向けた具体的な道筋を伝えることが重要です。
複雑化したシステムの維持・運用
DXの実現には、ビジネスに関わるさまざまなデータの収集・蓄積・分析が必要となり、それには柔軟なIT環境が必要です。
しかし日本の多くの企業では、縦割り組織の中で短期的な視点でシステム開発・改修を繰り返した結果、各システムがブラックボックス化し、保守・運用費が大きな負担になっています。
経済産業省は、企業のIT予算の9割以上が老朽化したシステムの維持管理費に充てられており、戦略的なIT投資に資金・人材を振れていないことが、DX推進の足かせになっていると指摘しています。
DXにつなげるためには、現状のITシステムを分析・評価し、仕分けながら戦略的なシステム刷新を推進する必要があります。
DXを推進する人材がいない
DXはIT部門だけが担当すればよいものではありません。
クラウドやAI、RPAなどの最新デジタル技術を理解しながら、自社にそれらをどう生かしていくか、各関係者を巻き込んでビジネスをデザインできる人材が必要です。
しかし、DXを推進するための人材育成の必要性は認識されているものの、実際にどのようなスキルを持った人材が必要かを定義し、具体的な育成プランを立てている企業は多くはありません。
スムーズな人材確保の方法として、アウトソーシングの活用も検討しましょう。プロジェクトや業務ごとに専門知識を持った人材の協力を得ることも有効です。
中長期的な視線を持ちながら、社外と社内の人材をうまく使い分けることが重要です。
【DX人材とは ー6つの業種、4つのスキル、3つのマインドセット>>】
DX推進指標を活用し着実にDXを推進するには
現時点におけるDX推進の進捗状況を確認
DX推進ガイドラインとDX推進指標をある程度でも把握したら、実際に現時点におけるDX推進の進捗状況を確認しましょう。
検討する段階で実質的には何もしていない、もしくはツールやソフトウェア、何かしらのIT技術の導入や選定の段階、またはPoC(概念実証)や導入テストや効果測定の段階など、具体的な進捗状況を把握すべきです。
【DX戦略とは?戦略成功に導く推進法からロードマップまで事例つきで解説>>】
反映や改善できる部分のリストアップとDXの成功事例のチェック
DX推進における課題や問題点が見えてきたら、反映や改善できる部分をリストアップしましょう。
また、国内外のDX推進の成功事例などをチェックし、どのようなにDXを進めているのか、どのようなIT技術を取り入れているのかを見るのもおすすめです。
例えば、同じ業界や業種のDX推進状況、DXの成功事例を見れば、自社に取り入れやすいIT技術を知れます。
【DXの進め方とは?参考にしたい3つの成功事例や推進のポイント>>】
DX推進指標の診断結果からの考察
そして、ここではIPAによる診断結果の考察を紹介します。
総括としては、2019年と2020年の結果より、国の企業全体としてはこの1年でDXが進んだと考えられると述べられています。
企業規模別にみると、大企業はすべての項目における現在値の平均が 2019年より2020年の方が高く、また現在値が上昇していることから、DX化が着実に進んでいると言えます。
一方、中規模企業中規模企業全体では DXが進んだとは言えません。小規模企業では現在値が上昇していると言えるものの、継続的に自己診断を行った企業は1社であったと示されています。
また、DX推進に必要な人材の育成や確保に関する項目、小規模企業で他の項目に比べ低くなっている IT資産の分析・評価など、各企業に共通する課題も見出されました。
なお、昨年度の分析結果は、今回の分析結果と基本的には同じであったが、一部では傾向が異なったようです。
それについては、DXに関連する政策や新型コロナウィルスに関する社会情勢により、DXの重要性が企業に広く認知されつつあるのではないか、とIPAは述べています。
今後はこうした状況の変化の把握、DX 推進指標による自己診断の普及化、継続的な分析を行い、適切な DX 推進政策の構築につなげいくとされています。
推進指標を参考にDX推進を進めよう
DX推進指標は、企業がDXへ向け取り組むべきアクションについて経済産業省が詳細に示した画期的なガイダンス資料です。
ITシステム構築に限らず経営のあるべき姿まで述べており、各企業は自社に合わせた形でDX推進プロジェクトを評価し、課題点を解決することを求められます。
DX推進指標を参考に、適切なPDCAを回してDX推進を成功させましょう。
【DX推進とは?指標や課題・企業事例をガイドラインに沿って解説>>】
◇AINOWインターン生
◇Twitterでも発信しています。
◇AINOWでインターンをしながら、自分のブログも書いてライティングの勉強をしています。