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2021.01.27

【PKSHA Technology】高収益を生み出す大注目のAI上場企業に迫る

株式会社PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)は、ディープラーニングを用いて機能特化型のアルゴリズムやパッケージソフトウェアを企業向けに開発するAIベンチャー企業です。

2012年、東京大学松尾研究室出身の上野山勝也氏と山田尚史氏がPKSHA Technologyの前身となる株式会社AppReSearchを設立して以来、会社は順調に成長を続けており、2017年には東京証券取引所マザーズに上場しました。

今回は、PKSHA Technologyの概要や事業内容を紹介しつつ、同社がいかにして上場まで上り詰めたのか考察します。

PKSHA Technologyとは

PKSHA Technologyは、自然言語処理画像認識機械学習・ディープラーニング技術を活用したアルゴリズムソリューション事業を展開するAIベンチャー企業です。同社は、社会問題の解決や、ポストデジタル情報社会に向けての価値創造を目指して、さまざまな事業に取り組んでいます。

企業概要

社名株式会社 PKSHA Technology
設立2012年10月16日
所在地東京都文京区本郷2-35-10 本郷瀬川ビル
代表取締役上野山 勝也
取締役山田 尚史、中田 光哉
社員数64人(2020年9月時点)
資本金18,000,000円(2020年9月時点)
平均年収714万円(2020年9月時点)
URL https://pkshatech.com/ja/

引用:
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS81483/bf4a8b34/e8a2/47cb/9771/fd1fed36ce39/S100KFNB.pdf

ビジョン:未来のソフトウエアを形にする

『未来のソフトウエアを形にする』

PKSHA Technologyは、「未来のソフトウエアを形にする」をビジョンに掲げ、機械学習・ディープラーニング技術を用いた「各種ソフトウェア・ハードウェアを知能化する技術」の研究開発と社会実装を行う企業として、アルゴリズムの研究を行う技術者・研究者により2012年に創業されました。

未来のソフトウェアとしてのアルゴリズムを形にすることで、さまざまな社会問題の解決やポストデジタル情報社会の新たな価値創造を目指しています。

沿革:NTTドコモや東京海上HDなどの大企業と連携

2012年10月機械学習技術を用いたデータ解析事業を事業目的とした株式会社AppReSearchを設立
2013年2月アルゴリズムモジュール「予測モジュール_Predictor」を開発
6月本店所在地を東京都文京区本郷七丁目「東京大学産学連携プラザ」に移転
11月アルゴリズムモジュール「行動解析モジュール_Logger」・「強化学習モジュール_Agent」を開発
2014年2月事業規模の拡大に伴いオフィスを東京大学アントレプレナープラザに移転
3月アルゴリズムモジュール「推薦モジュール_Recommender」を開発
7月東京大学工学系研究科 特任准教授 松尾 豊氏が技術顧問に就任
12月アルゴリズムモジュール「異常検知モジュール_Detector」を開発
アルゴリズムモジュール「テキスト理解モジュール_Dialogue_1」を開発
2015年3月アルゴリズムモジュール「画像/映像解析モジュール_Recognizer」を開発
10月アルゴリズムモジュール「対話理解モジュール_Dialogue_2」を開発
CRM 領域のアルゴリズムソフトウエア「CELLOR(セラー)」をリリース
2016年10月100%子会社「株式会社BEDORE」を設立、自動対話領域に進出
株式会社NTTドコモとの資本業務提携を開始
12月動画像認識領域のアルゴリズムソフトウエア「PKSHA Vertical Vision」をリリース
2017年8月大学発ベンチャー表彰2017にて「文部科学大臣賞」を受賞
9月東京証券取引所マザーズ上場
2018年2月第4回「日本ベンチャー大賞」にて「審査委員会特別賞」を受賞
11月ファンドを設立「PKSHA SPARX Asia Algorithm Fund1号」
2019年2月一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連) 入会
10月関連会社MNTSQ 株式会社が長島・大野・常松法律事務所とリーガルテック領域での協業を開始
2020年2月スパークスと共同でアルゴリズムを活用した投資運用業務をサポートするシステムを開発、提供開始
3月自然言語処理ライブラリ「Camphr」をオープンソースで公開
ベネッセの学習アプリ向けにアルゴリズムを提供開始
9月日本語の自然なアクセントを自動推定する自然言語処理ソフトウェア「tdmelodic」をオープンソースとして公開
10月ベネッセと共同開発した学習アプリ「AI StLike」が、日本e-Learning大賞 経済産業大臣賞を受賞
11月東京海上HDと合弁会社を設立。データをもとにソリューションを創出
12月大企業向け契約データベース「MNTSQ for Enterprise」正式版がリリース。コマツ、大阪ガスなどに提供開始

業績推移

PKSHA Technologyの業績推移は以下のとおりです。

売上高のデータから見てわかるように、PKSHA Technologyは2016年から成長し続けています。2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、営業利益が前年より若干減少しましたが、それでも安定して高利益を出すことに成功しています。

2017年に東証マザーズ上場

2012年の創業から順調に成長を続けたPKSHA Technologyは、2017年9月、東証マザーズ上場を果たしました。

AIベンチャー企業が上場するのは珍しく、上場初日の公開価格2,400円に対して、終値が5,840円となり、2日目も前営業日比17%高の6,840円(公開価格比2.9倍)とストップ高で取引を終え、投資家からの期待の高さがうかがえました。

また、IPO初値の時価総額は約703億円と、東証マザーズにある企業の中でも上位10%に入るほど高い時価総額を誇っています。

PKSHA Technologyが上場した2017年9月から2020年12月現在までの株価推移は以下のとおりです。

出典:Google

事業内容

PKSHA Technologyは、機能特化型のアルゴリズムモジュールを複数開発しており、それらをさまざまなソフトウェア・ハードウェアのコア機能・サブ機能として利用できます。

また、アルゴリズムモジュールを複数組み合わせることにより、企業ごとのニーズに合わせたアルゴリズムを柔軟に提供しています。

アルゴリズムモジュール

PKSHA Technologyは、AI技術に関連したアルゴリズムモジュールを開発し、それをライセンス化して収益をあげています。

代表的なアルゴリズムモジュールは以下の8つです。

テキスト理解モジュール <Dialogue_1>

テキストデータの意味理解に特化したモジュールで、自然言語の内容を理解し、分類・類型化を高速に行います。社内文書からの特定文書の抽出や、コールセンターログの分析・可視化などで活用可能です。

対話モジュール <Dialogue_2>

自然言語での対話・応答の制御を司るモジュールで、最適な対話シナリオを選択し、音声認識への拡張も可能です。すでにチャット上での自動対話において多数導入事例があり、ロボットとの自動対話にも活用できます。

画像/映像解析モジュール <Recognizer>

ディープラーニングを用いた画像・映像データの解析モジュールです。映像データ内の人物検出・識別、顔・表情検出、動作特徴解析、物体検出・識別、などの機能により、各種ソフトウェアとイメージングデバイスの知能化を担います。

行動理解モジュール<Logger>

膨大なユーザ行動データ、アプリケーションログを有用なデータ資源に変換するためのモジュールです。ログ・行動履歴を解析しユーザの分類・類型化を進め、顧客セグメントの自動・半自動作成等を可能にします。

推薦モジュール <Recommender>

ユーザの属性・嗜好性を解析し、最適な情報出し分けを実現する機械学習モジュールです。複数のECサイト上での商品推薦、ウェブサイト上でのコンテンツ推薦などに活用できます。

予測モジュール <Predictor>

金融機関での与信スコアの構築、ECサイトのユーザ購買予測といった、時系列情報に対して未来予測を行うモジュールです。

異常検知モジュール <Detector>

異常現象を検知するためのモジュールです。工場の検品処理の自動化・半自動化や、ウェブサイト上の不適切なコンテンツ検知などを行い、定型的業務にかかるコストを削減できます。

強化学習モジュール <Reinforcer>

他モジュールの認識結果を利用し、さまざまな状況での最適な選択肢を自律的に探索・学習します。例えば、行動理解モジュール(Logger)との連携により広告クリック率を最適化する、異常検知モジュール(Dialogue)との連携によりコンバージョンを最大化する対話パターンを探索するなど、認識結果を自動でアクションに落とし込むことが可能です。

パッケージ・ソフトウェア

PKSHA Technologyは、以上のモジュールをベースとしたパッケージ・ソフトウェアも販売しています。

代表的なパッケージ・ソフトウェアは、以下の4つです。

HRUS(ホルス)

HRUSは、業界やユースケース特化型のディープラーニング技術を用いた画像・映像認識エンジンです。各IT企業が提供する汎用的な画像解析エンジンとは異なり、業種・ユースケース特化型(Vertical型) で構築する事で高い識別精度を実現しています。各業種・ユースケースの最大級の教師データを持つプレイヤーと連携することで、各業種・ユースケースに対して新たな価値を提供できます。

BEDORE(ベドア)

BEDOREは、チャット対応・FAQ対応の自動化ソリューションです。BEDOREを活用すれば、これまで人手で行われていた接客・コールセンター・FAQ対応を自動化・半自動化できます。

日本語の解析と生成は言語依存し海外のソリューションでは悩みがつきないものですが、PKSHA Technologyが保有する業界固有表現辞書(日本語)と、汎用的なシステムアーキテクチャーにより高い精度の自動化・業務サポートを実現しています。BEDOREはAPI型とASP型の2種類が提供されており、高い日本語認識能力からLINE社など大手企業の導入実績があります。

CELLOR(セラー)

CELLOERは、店舗を持つ企業向けのデジタルマーケティングツールです。頻繁に来店する顧客のみにクーポンやキャンペーンメールなどを届けられます。また、機械学習アルゴリズムを活用して顧客の過去の購買履歴や性別などのデータを分析し、それぞれの顧客に応じた最適な情報を届けることも可能です。

PREDICO(プレディコ)

PREDICOは、さまざまな業界のデータの蓄積により実現される「現実世界の予測・推論エンジン」です。PREDICOはさまざまな業界で導入が進んでおり、Maas領域では、需要予測・価格最適化・リソースの最適配置や再配置などに活用されています。Financial領域では、個人・法人などへのリアルタイム与信スコアリングやオンライン決済パターンからの犯罪検知などに導入されています。

PKSHA Technologyの特徴

これまでPKSHA Technologyの概要や事業内容について紹介してきました。

ここからは、PKSHA Technologyの特徴をご紹介しつつ、具体的にPKSHA Technologyの何がすごいのか、なぜPKSHA TechnologyがAIベンチャー企業としては珍しい上場を果たせたのかを考察します。

収益性が高い

PKSHA Technologyの過去5年間の業績は以下のとおりです。

売上高(百万円)営業利益(百万円)営業利益率(%)
2016年45915734.2%
2017年93439542.2%
2018年1,50359639.6%
2019年3,06172023.5%
2020年7,3936348.5%

参考:https://pkshatech.com/ja/ir_detail/1

表を見ると、PKSHA Technologyの売上高は年々上昇しており、会社が成長し続けていることがわかります。営業利益においては、2020年度こそ新型コロナウイルスの影響で減少したものの、過去5年間の平均営業利益率は約30%と非常に高い数字を誇っています。

経済産業省のデータによると、平成29年度におけるIT業界全体の平均営業利益率は7.4%でした。このデータから、PKSHA Technologyがいかに収益性の高い会社であるかわかります。

PKSHA Technologyがこれほどの高収益を得られているのは、提供するプロダクトがアルゴリズムライセンスだからです。

アルゴリズムは、ユーザーが使えば使うほどデータがフィードバックされ、精度とユーザー体験が向上していきます。そのため、アルゴリズムライセンス事業は解約率が低く、収益が積み上がっていくビジネスモデルとなっており、それがPKSHA Technologyの安定した売り上げにつながっているのです。

多くの大企業と連携

PKSHA Technologyのアルゴリズム事業の魅力は、顧客企業が持つ教師データを使えるということです。PKSHA Technologyは、NTTドコモやリクルートなどの顧客企業が持つデータを使って、アルゴリズムモジュールの精度をさらに向上させています。

他にもPKSHA Technologyは、LINEやデンソー、トヨタ自動車など多くの大企業を顧客に持っており、これらの大企業から売り上げと教師データをもらい、ソフトウェアの品質をさらに向上させているのです。

他社が同じ品質のソフトウェアを作ろうと考えた場合、それと同じだけのデータを集めなければなりません。そのため、アルゴリズムライセンス事業の参入障壁は上がり、PKSHA Technologyの長期的な売り上げ獲得につながります。

社員の専門性が高い

PKSHA Technologyは、もともと東京大学の松尾研究室出身者によって起業され、アカデミック領域で高い専門性を有するメンバーが多数在籍しています。

また、社員の8割以上がエンジニアです。一方、販売はパートナー企業と手を組んで展開するため営業担当者はおらず、コーポレートスタッフも数名しかいません。つまり、製品の品質向上に経営資源を特化しているということです。

技術領域の専門性が高いあまり、求人広告に経費をかけても満足のいく採用ができるとは限らないため、社員自身の紹介から入社する形が多いといいます。社員は80名以下と少ないものの、一人ひとりの技術力の高さが、高品質のプロダクト提供と大企業との取引を可能にしているのです。

PKSHA Technologyの今後

PKSHA Technologyのアルゴリズム及びソフトウェアは、商品特性ゆえに幅広い産業に対して提供することが可能です。そのため、今後は小売やコールセンター市場のみでなく、他の産業にも積極的に参入して新規事業に取り組んでいくでしょう。

また、2020年度の有価証券報告書では、PKSHA Technologyのさらなる事業拡大に向け、積極的に優秀なアルゴリズムエンジニアとソフトウェアエンジニアを採用していくことを発表しています。

今後、上記にある新規事業の投資や、人件費の追加、新型コロナウイルスなどの影響で利益率が低下することも考えられます。ただ、プロダクトの特性からして、今後も有名企業との関係は続いていくと考えられるため、安定した売り上げが得られるでしょう。

まとめ

今回は、2017年に上場したAIベンチャー、「PKSHA Technology」について紹介してきました。

PKSHA Technologyは、社員数80名以下のベンチャー企業でありながら、国内トップクラスの機械学習/ディープラーニングアルゴリズム技術を誇る企業です。NTTやトヨタなど大企業との協業もあり、今後社会に大きなインパクトを与える可能性を秘めています。

また、同社は投資家からも将来性のある企業として大きな注目が集まっています。これから始まる新規事業や新サービスなどの動向はもちろん、株価の動きにも目が離せません。

ThePlayers シリーズでは、AI企業にフォーカスした記事を書いています。さまざまなAI企業を比較することで、成功するAI企業の法則が見えてくるかもしれません。

▼The Players vol.1「Preferred Networks」の記事はこちら

▼The Players vol.2「エクサウィザーズ」の記事はこちら

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