AIは人間の能力を上回る情報処理能力や分析能力を持っています。
例えば、画像認識を使ったセキュリティ機能や自然言語処理を使った機械翻訳など、私たちが身の回りのAIに頼る場面は多くあります。
その高度な技術は、AIエンジニアのような特別なスキルをもってしないと作れないと思っている方が多いのではないでしょうか。
実は今、AIの初学者やプログラミングが分からない文系でもAIを作り、動かすことが可能なんです。それもなんと3ステップで!
今回はAIの知識が少しあれば誰でもできる、AIの作り方について説明します。
何を隠そう、私もAI初心者のド文系ですのでどなたにも理解できるように解説していきます!
AIを作るってどういうこと?
まず直面するのがこの問題です。
いきなり足元をすくわれるようですが、AIを作るとは具体的に何をすることなのかまずは確認しておきましょう。
この記事の中では「AIを作る」とは、「多くの学習データ(教師データ)を何度も繰り返し学習させて、モデルを完成させる」ということにします。(製品やWebシステムに組み込むことは、この次の過程とします。)
学習データは単にたくさん用意すればいいというわけではありません。データの関連性や偏りがないかなど、データの質はとても重要です。学習データによってアルゴリズムの精度は左右されます。
つまり、AIを作るには「大量で質の高いデータ」と「それを動かす環境」を用意する必要があります。
では、AIが作れたら何ができるのでしょう?ここでは2つ紹介します。
社内などでの問題解決を図ることができる
AIを使いたいと思ったときは、きっと何か解決したい問題がある時でしょう。
例えば、人の手で行うのが煩わしい仕事や人が行うととミスが多い仕事などです。
AIを作って実際に活用できると今行っている作業が簡略化され、空いた時間を他のことに使えます。
さらに、新たな事業や他の作業に時間を費やせるようになります。
AIエンジニアになれる
将来AI人材が不足していると言われています。
経済産業省が平成31年に発表した統計によると、AI人材は2020年には約4万4000人、2025年には約8万8000人不足するようです。
AIに関する仕事にはAIエンジニアやデータサイエンティストなどがあり、これからの社会に必須な職業となると言われています。
就職や転職でこのようなAI関連の仕事に就こうと思っている方には、AIを作るスキルは必須になります。
AIを作る前にすること
さて、やっと作り方が紹介されると思ったあなた。その前に確認しなくてはいけないことがあります。
プログラミング知識について
簡単なAIモデルであればプログラミング知識の有無は問われません。ツールなどを活用してAIモデルを作ることができます。
先ほど紹介したAIエンジニアを目指そうと思うならPythonなどといったプログラミング言語を学ぶことはとても重要です。
しかし、その技術がなくても簡単なAIを作り、その仕組みを理解することは誰にでもできます。
AIを理解することは今や文理問わず、必要なスキルにもなりつつあります。
AIの基本知識を覚えてしまう
プログラミング知識が不要と言っても、AIの基本知識は必要となるでしょう。
なぜこの作業が必要なのか、今何をしているのかが理解できていた方が習得が早いですし、何より楽しくAIを作れるのではないでしょうか。
機械学習技術や教師あり学習、ニューラルネットワークなど。
AI用語やその意味は無理やりでも覚えてしまってからAI作りを始めるのが懸命です。
どこからAI作りをスタートするのかを決める
AIを動かすにはその環境を用意しなくてはなりません。その用意の仕方は2通りあります。
1つ目は、一からプログラムコードを書き、環境を作っていく方法です。
このやり方の場合はやはり、PythonやC/C++などのプログラミング言語を学ぶ必要があります。統計や数学の知識も多少必要になってくると思います。
この方法はなかなか時間がかかるので、とりあえず試しにAIを作ってみたいと思う方にはおすすめしません。
2つ目は、すでにプログラミングが動くようになっている環境を使う方法です。
現在、SonyやAmazon、GoogleなどのIT企業から、簡単にAIを作れるようにプログラミングされているサービスが多く提供されています。
GUIベースで直感的に操作ができるようになっているため、コードを書いたり理解する必要はありません。
AIを作るための3ステップ
AIを動かす環境を決めたらやっとAI作りがスタートできます。
ここからは3ステップです!
- データを集める
- モデルを設計し、学習させる
- AIが機能するか確かめる
各ステップを具体的に説明していきます。
①データを集める
AIを作る上で要とも言えるデータ収集です。
ここの作業にAI作りの大半の時間を費やす場合もあり、とても重要な作業になります。
例えば犬の画像を犬種ごとに分類できるAIを作りたいのなら、たくさんの犬の画像を用意します。同じように、対話するAIを作るなら会話のデータを多く用意します。
A:「こんにちは。」B:「こんにちは。」
A:「調子はどう?」B:「元気だよ。」「まあまあだね。」「熱があるんだ。」
といったようにさまざまなパターンの会話を集めてきます。
膨大な時間がかかりそうな作業ですが、学習データはAIの精度に大きく関わってくるので手を抜かずに行いましょう。
データの集め方として2つの方法を紹介します。
画像検索やSNSのデータを引っ張ってくる
完全に手作業になりますが地道に集めていくのがこの方法です。
画像検索をして自らのPCに保存したり、ツイッターやラインのトークを参考に会話データをリストにまとめて集めていきます。
社内の過去のデータなどを探してきて使うこともできます。
公開されているデータセットを使う
データセットは無料で公開されていたり、データセット売買できるプラットフォームもあります。これらを活用するのが一番素早くデータを集めることができます。

20,580枚の画像と120種の犬種カテゴリーが入ったデータセットを無料ダウンロードしてみました。
▼こちらの記事にはデータセットを提供しているサイトがまとめられています。ぜひ活用してください。
そして、AIが学習できるように集めたデータの処理を行います。集めたデータはそのままでは使えません。
- 正解ラベルをつける。(例えば、トイプードルの画像には1、チワワの画像には2…といったようにリストにしていきます。ミスのないように気をつけます。)
- 学習用(AIに学習させる用)とテスト用(学習できているか確かめる用)のデータを分けて作る。
- データのサイズや形を揃える。
- 関係のないデータが混ざっていたら消す。
などといった処理を施しデータセットの準備が完了します。
このあと使うAI構築環境次第では、自動でデータ処理してくれるものもあります。

②モデルを設計し、学習させる
モデルを設計するとは、先ほど説明したAIを動かす環境を作るということです。
一から作る場合はプログラミング言語を書くところから始まります。
しかし、プログラミングが不要なツールもあるので「試しにAIを動かしてみたい!」という方はこちらの利用をおすすめします。無料登録で使えるツールもあるので後ほどご紹介します!
そして作ったデータを用意したモデルに読みこませて学習させます。
ここでは先ほど用意した学習用のデータを使います。
③AIが機能するか確かめる
学習が終了したら次はAIが学習したように動くかチェックします。
今度はテスト用のデータを用いてAIが判別できているかを確かめ、精度をみます。
低い精度が出たらもう一度データを収集し、処理する過程などを見直す必要があります。
【おまけ】そして実装する!
高精度のAIが作れたら、テスト運用をした上で実装してみましょう。
作ったAIモデルをサービスに組み込む作業を行います。
しかし、この作業にはプログラミング知識が求められる場合があります。他の機能と連動させたり、APIを引っ張ってきたりするには専門の知識の必須となりますのでここからは社内で相談する必要があるでしょう。
おすすめの「プログラミング不要ツール」3選
見てきたように、AIを作るのは環境さえあればプログラミングは不要なのです。
ここで、大手IT企業が公開しているAI構築環境サービスをご紹介します。
SONYの「Neural Network Console」
こちらはSONYが提供しているサービスです。
実際に私もこれを使ってニューラルネットワークを構築してみました。
見た目が非常にわかりやすく直感的に操作できました。
データ集めるの大変そう、、と思ったらとりあえずライブラリから無料でデータ(学習用に処理済み)を引っ張ってAIを作ることもできます。
さらにYouTubeでSONYがこのNeural Network Consoleの使い方動画をたくさん出しているので使い方がわからなくなった時は動画を検索してみてください。
初めは10時間の無料体験ができます。
Googleの「Cloud AutoML Vision」
こちらはGoogleが提供している画像認識が作れるサービスです。
画像のクラスタリングやアップロードなど非常に明快で、初心者にもわかりやすい表示になっています。
学習もTRAINのボタンを押すだけで始まり、6分程度で完了します。
メルカリのブランド品の判別にも使われているサービスです。
ぜひ使ってみてください。
初回は40時間無料です!
IBM SPSS Modeler
こちらはIBMが提供している予測分析プラットフォームです。
膨大なデータもほんの数秒で学習、分析してくれます。
過去のデータを使って顧客分析や需要予測をするというようなビジネスシーンにおすすめのサービスです。
パレット上に分析プロセスを可視化できるインターフェースで非常に使いやすいです。
しかし何と言っても1番のおすすめポイントは、IBMがアップしているYouTubeのSPSS Modeler解説動画です!
3分クッキング風にSPSS Modelerを解説しているのですが、出演されている社員のお2人のやりとりがおもしろい上に説明がとても分かりやすいので、まずはこちらをご覧ください!
30日間の無料評価版がありますので試しみてください。
▼その他のAI関連GUIツールまとめはこちら
もっと本気で作ってみたくなった人へ
AIを作るの面白そうだなと感じた方は、ぜひこれを機会にAIの勉強を加速させてみてはいかがでしょうか。
プログラミング言語やニューラルネットワークの構築方法など知識も深めていけば、AIエンジニアなど将来のキャリアも見えてくるかもしれません。
ここではAI学習に最適の書籍、Webサイト、プログラミングスクールについてご紹介します。
「AIについてもっと知りたい」人向け [基礎編]
こちら本はAIを学び始める時にぜひ読んでいただきたいです!私もAIを学び始めて最初に読みました。
AIとは何かという基本知識やAI研究の歴史、そして人間社会に及ぼす影響など基本から丁寧に書かれています。
「文字ではなく動画で勉強したい!」という方にはアイデミーのサービスをご紹介します。会員登録(無料)を済ませればAIに関する基本を学べる動画を無料で観ることができます。
動画で続けて学びたい方は月額で申し込むことでカウンセリングを受けながらの受講も可能です。
法人向けのサービスもあり、社員が手軽にAIリテラシーやAI導入・実装の知識を学べるように取り入れている企業も多くあります。
「文系だけどAIを活用した仕事がしたい」人向け[基礎・基本編]
「AIを使って働きたい、でもプログラミングはちょっと、、。」という方におすすめなのがこちらの本です!
現在さまざまな仕事の自動化、機械化が進んでいます。そのためこれから多くの分野でAIが必要な時代がやってくると言われています。
そんな世の中で「文系AI人材」が必要になってくる、そんな可能性と必然性を説いているのがこちらの本です。文系だからできるAIとの関わり方を実践的に教えてくれる本になっています。
「プログラミング言語を習得したい」人向け[応用編]
私はプログラミングはできませんので、現在プログラミング習得中の先輩におすすめを伺いました!
プログラミングに初めて取り組む人にはまずオライリー(O’Reilly)シリーズの書籍がおすすめです。
実は、オライリーの書籍は一部英語で公開されているそうです。英語で勉強するぞという強者はこちらもご覧なってみてください、、、!
その他のAI関連書籍
▼その他のAI関連書籍について詳しくはこちらをご覧ください。
おわりに
今回はAIの知識が少しあれば誰にでも実践できるAIの作り方について紹介しました。
AIを理解する上で、AIを作ってみることはとてもおすすめです。
実際に自分で作ってみると、AI学習のためのデータ分量やデータ処理、ニューラルネットワーク構築、かかる作業時間など感覚的に分かることはたくさんあります。
頭でっかちになりがちなAI学習も、作ってみることでかなり視野が広がります。
特に、AIを学びたての人や文系の人は「AIを作るなんて無理!」と思い込んでいませんか?ぜひ自らの手でAIを作ってみてください。新しい発見があるはずです。
はじめまして、大学では商学を専攻しています。趣味はうさまる(LINEスタンプ)集めです。わかりやすくAIについて発信していきます!