
近年は、企業の採用活動にもAIの導入が進んでいます。
特に今回の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人との接触を避けるために就職活動はウェブで行うことが主流になりました。直接会わなくても就活生の性格や企業とのマッチング度合いを正確に計るために面接にAIの活用を検討している企業が増えてきています。
また、就活生の方や転職先を探している方の中には、AI面接を取り入れている企業にエントリーした方もいるでしょう。
しかし、AIによる面接は「どのような基準で合否が決められるのか」具体的な指標が分かりにくいため、導入する側も受ける側も不安があると思います。
そこで、今回はAIを生かした採用活動について、導入のメリット・デメリットや、就活生の影響をまとめていきます。
目次
面接にAIを導入する企業が増加中
採用活動において、面接にAIを導入する企業は増加しています。
例えば、ソフトバンクは面接をAIに任せることでiPhoneやPepperを通して面接をすることが可能になっています。
そして、面接にAIを導入する企業は年々増加しています。将来は、就職活動において面接はAIと行うことが普通になるのではないでしょうか。
就活生はどのように面接を受けるか
AI面接を実施するにあたって、就活生は特に難しい操作をしたりする必要はありません。
例えば、企業の募集に応募すれば、企業から学生にAI面接のためのログインURLが送られてきます。学生はそのURLからアカウントにログインし、簡単な操作のみで面接動画を撮ることができます。
なお、質問事項は画面に表示されます。
AIが評価する仕組み
AI面接において、どのように応募者を評価しているのでしょうか。
AI面接では学生の音声をマイクが聞き取り、その内容や話し方をAIが分析します。また、カメラによって応募者の表情や動きを記録しAIが分析します。
そして、それらの分析結果から応募者のコミュニケーション能力や頭の回転、協調性などを総合的に評価します。
評価結果は数値として表示されますので、評価に曖昧さがないのが特徴です。
AI面接のメリット
企業が面接にAIを導入するメリットとしては、以下のものが挙げられます。
企業サイド
- 応募者の多い面接を自動化することで、業務効率化ができる。
- 面接官によって評価が曖昧だった部分を数値によって明確にできる。
- コスト削減を実現できる。
- 地方の優秀な学生の取りこぼしを防げる。
就活生サイド
- 面接のために企業へ出向く必要がないため、負担軽減に繋がる。
- 圧迫面接の心配がない。
- 24時間いつでも柔軟に面接を受けられる。
このように、AI面接のメリットは企業と就活生のお互いにとって、負担を軽減できることにあります。
特に人手不足が深刻化する将来では、AI面接の需要がさらに高まると期待できます。
AI面接のデメリット
確かに、AI面接にメリットは多いですが、反対にデメリットが存在することも事実です。
具体的には、以下のものが挙げられます。
企業サイド
- AIはブラックボックスのため、なぜそのような評価なのかわからない。
- 優秀なのに不合格になる応募者が発生するリスクがある。
- 中小企業によってはコストが高く感じられる可能性がある。
就活生サイド
- AIによってどこがどのように評価されているのかわからない。
- ブラック企業の可能性がある。
- 企業に訪れられないため、会社の雰囲気がわからない。
このように、評価の不透明さやAIの不完全さといった、AIならではの問題が生じる可能性があります。また、実際に人と合わないからこそのリスクがあるのも事実です。
そういったことから、AIを使うことで発生するリスクを軽減するような仕組みも必要です。
AI面接 導入企業例とその狙い・効果
株式会社アキタフーズ(利用サービス:SHaiN)
卵や加工食品を提供するアキタフーズでは日本で初めて、2019年卒新卒採用の全応募者に対してAI面接による一次選考試験を実施しました。
- 導入の背景、狙い
アキタフーズがAI面接を導入した狙いには「採用の母集団を増やしたい」という考えがあったようです。
今まで遠方の畜産系大学の学生は説明会や面接に参加しづらかったため、より多くの学生とのマッチングを図る狙いで導入しました。
- アキタフーズが使用しているサービス:SHaiN(株式会社タレントアンドアセスメント)

画像引用:https://shain-ai.jp/about/
ShaiNは株式会社タレントアンドアセスメントが開発した世界初のAI面接用のサービスで、国内の大企業や中小企業など20社を超える企業に使用されています。
スマホで面接を受けられるため、24時間365日面接をすることが可能です。また面接終了後、人事は応募者一人一人の性格や人柄を分析したレポートを受け取れます。
AI面接は、質問に対する答えと動作から応募者を評価するシステムです。SHaiNは、対人影響力やバイタリティ、ストレス耐性を60分から90分ほどかけて正確に分析できます。
- SHaiN導入企業例▼
富士通コミュニケーションサービス株式会社、株式会社吉野家、ウシオ電機株式会社 など - サービスを利用したアキタフーズの感想
SHaiN導入事例より抜粋▼
「農場長の面接もエントリーシート(ES)もすべて廃止しました。AI面接ですべてカバーできる、それ以上の情報が得られるとの判断です。これにより候補者と現場の両方の負担が大きく軽減されました。」
「ここまで人生がわかるんだな、と実感しました。ESは候補者の負担がとても大きいにも関わらず同じような内容になりがちですが、このレポートは一人ひとりの背景がしっかり表れます。これだけの情報を面接の前に得られるメリットは大きいです。」
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000011777.html
株式会社バンダイ(利用サービス:HireVue)
日本を代表する玩具メーカーのバンダイも2016年度の採用活動からAI面接を取り入れています。
- 導入の背景、狙い
グローバル化の推進による事業拡大を目指すバンダイは、国外に在住する採用候補者の選考に有効したいという考えでAIによる面接を導入しました。
また、従来のテレビ電話ツールを用いた事前選考は、時差の関係で日程調整が難しいなどの時間的制約が大きいため、一定数以上の候補者に対応出来ないという問題もあったようです。
- バンダイが使用しているサービス:HireVue(タレンタ社)

画像引用:https://www.talenta.co.jp/product/hirevue/
HireVueは、アメリカで開発され、タレンタ社によって代理販売されている採用DXソリューションです。
録画とリアルタイムの両方で面接ができるほか、言葉や音声、表情をAIが分析することで自社に合った人材かどうかをランク付けできます。
大量の応募者を一気に面接し選別できるため、採用担当者は本来の仕事に集中できるようになります。
- HireVue導入企業例▼
伊藤忠商事、東京海上日動、ヤフー、旭化成、花王など - サービスを利用したバンダイの感想
HireVueのリリース記事より抜粋▼
・選考を録画で実施することで、時差の影響や日程調整を不要とし、導入前より、多数の選考候補者に対応することができた。
・録画画像を確認する際、時間や場所の制約がないため、国内外の複数の担当者が候補者を確認することができ、適切で公平な選考を実施することができた。
・候補者においても、録画面接であれば時差や場所を問わずに参加することができるため、候補者の負担を軽減し、選考参加率の高さにつながった。
AI面接突破のコツはたったの3つ
ご紹介してきたように、多くの企業がAI面接を取り入れ、その効果を実感しています。
近年「AIマッチング」がさまざまな業界で流行っており、ビジネスにもこれからさらに浸透していくでしょう。
また新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学生と企業の出会いや直接会っての交流が難しくなっています。会えないことによる適性や性格のミスマッチを減らすためにAIの導入を検討する企業も増えてくるでしょう。
そこで、今回は「AI面接を突破するコツ」を3つ紹介します。今後、就活や転職でAI面接を受ける方は参考にしてみてください。
徹底した自己分析をする
AI面接では応募者が今までどのような経験をし、どのように物事に取り組んできたかが重視されます。そのため、ただ自分がやりたいことやできることを発言するだけでは、不十分です。
どのような状況下で、どのような課題があったのか。そして、それに対してどう行動してどんな結果をもたらしたのかをしっかりと答えられることが大切になります。学生であればサークルやアルバイト、社会人であれば仕事などで行なってきたことを言語化していきましょう。
これは対面の面接でも求められることですので、普通の面接対策と大きく変わることはありません。
AIが相手でも表情や姿勢、話し方に注意!
また、AI相手で人が見ていないからといって、手を抜いていいわけではありません。
身だしなみや雰囲気も評価されますので、裸やパジャマで受けてしまうと、そのこともレポートとして会社に送られることになります。
先ほど紹介したSHaiNでは質問内容だけでなく、カメラで観察された内容も評価対象となっています。
具体的には「インパクト、理解力、表現力、ストレス耐性」が項目としてあるようです。
実は筆者も就職活動期にはAI面接を受けたことがあります!(当たり前ですが、)スーツを着て姿勢よく座って受けました。話し方は普段より発音良く、ゆっくり、区切りをつけながら話すようにして行いました。
話す内容も大切ですが、相手に「自分の話を聞かせてあげる」ような話し方、姿勢も重要です。
自分の言葉で素直に語る
これまで自身の過去について聞かれることが多かったAI面接ですが、最近では志望動機や入社してやりたいことなど企業に合わせた質問もされるサービスがでてきているようです。
これは、企業がエントリーシートで確認していた項目もAI面接で代替できるという企業側のメリットがあります。
そのため、自分のやりたいことをきちんと語れることが重要です。取り繕うのではなく、その会社でやりたいことを素直に語りましょう。
AI面接が行われるのは選考フローの序盤のため、志望動機を語ることが難しいかもしれません。
エントリーシートの提出が求められていなくてもその会社の志望動機などの聞かれそうな基本事項はあらかじめ準備しておけば、突然の質問にも対応できるでしょう。
参考:PRTIMES「AI面接サービスSHaiN に「フリー質問」機能が追加 〜エントリーシート(ES)の確認項目をAI面接で可能に〜」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000045.000011421.html
まとめ
大量の応募者一人一人と採用担当者が面接していては、多大な時間を取られてしまうだけでなく、一人一人と向き合う時間が限られてしまうことで応募者の人柄や能力が正しく把握できないこともあります。
しかし、面接にAIが導入されれば、今までかなりの時間を取られていた面接を自動化し、採用活動の効率化に繋がります。また、自社に合いそうな応募者にかけられる時間も増えるため、採用のミスマッチも増えにくくなると期待できます。
そういったことから、今後はAI面接を導入する企業は増加し、就活生はAIと面接をするのが普通の時代になるかもしれません。
慶應義塾大学商学部に在籍中
AINOWのWEBライターをやってます。
人工知能(AI)に関するまとめ記事やコラムを掲載します。
趣味はクラシック音楽鑑賞、旅行、お酒です。